クリスマスイブには…

クリスマスイブが来ると思い出すんですよ…

ある所に若い夫婦が住んでいてね、まだビンボーだったから
古いアパートに住んでいて、その部屋にはエアコンも付いてないし、
台所には湯沸器すら無いの、
冬は相当寒いんじゃないかと思ったんだけどさ、そこの旦那が言うんだよ、
「うちはあったかいよ」って。

そいつが帰る頃にはさ、奥さんが夕飯の支度をしていてね、
台所から上る湯気で、部屋中があったまってるんだって。
ちいさな部屋だったからね、あとは電気ストーブくらいで充分だったみたい。

仕事が終わると急いで家に帰ろうとするんだよね。
飲みに誘っても3回中、2回は断られたな、人付き合いの悪いヤツだよ。
よほど居心地が良かったのかなぁ、あのアパート。

で、クリスマスイブの日にはね、

みんな奮発してオシャレなレストランとか予約してんのに、
そいつは、やっぱり家に帰るの。
まあるいケーキとワイン抱えて、嬉しそうに帰って行くわけ。
毎年毎年、イブはそうやって過ごしているらしいんだよねぇ。
飽きもせずによくやるよなーって思ったけど、あいつにとっては
幸せな時間だったんだろうなぁ。

愛情のこもった料理と、自分の選んできたケーキを二人で楽しむ、
そんなイブの過ごし方もいいものかもね、ちょっとうらやましいかなぁ、、
今じゃ、少し贅沢も出来るようになって、どこかのマンションに越したらしいけどね。
たぶん、今夜もケーキ抱えて帰ってるよね、  あいつ。


幸せのカタチって人それぞれだから、「これ」ってうまく表現できないけど、
例えば、それは温かなスープから立ちのぼる湯気のように
手に取る事はできなくても、心にしみてくるようなもの、なのかな。

それは、なにげない日々の中にあるのかもしれないし、
気がつかない位でちょうどいいのかもしれませんね。

すべての人のもとに天使が舞い降りる夜に、そんなことを想うのでした。

           ~ Merry Christmas to you !~