この町で

久しぶりに”中目黒”に行った
東京に出て来て初めて暮らした町、中目黒。
この町の片隅、四畳半一間から僕の東京での生活は始まった。
それから何度か引っ越しをしたけれど、
この街で10年ほど過ごした。
「なつかしいなぁ、」
商店街の様子もだいぶ変わったけれど
歩いていると色々な事を思い出す。
笑っちゃうくらい貧乏だったけど、楽しかった。
あの頃暮らしたオンボロアパートは、まだ そのままだろうか。
僕らは
過去を懐かしく思い出す、過ぎてしまえば
どんなことも良い事のように思えてくる。
そして
明日を夢見る、思い描いた未来を実現する方法を考える。
それは良い事なんだと、思う。
だけど
”今日”はどうなんだろう、
今日は何をしなければいけないのだろう?

 

明日の事を考えながら、ただなんとなく過ぎて行く。
明日を語りながら、気がつけば ”今日” は過ぎ去って行く。
帰り道、人もまばらな電車の中で 目の前には、
鞄を投げ出し うなだれている中年のサラリーマンがいた。
皆同じだね、
多くの人が明日を思いながら何かを探している、今日を忘れたままで。
この電車が、どこにも止まらずに走り続けたらいいのにね、
このままずっと。
「なつかしい街」は窓の外を流れ、どんどん過ぎ去って行く。
僕も、あの頃とは違う場所に来てしまったんだよね、
これからも少しずつ変わり続けなければいけないのだろう。
次の場所へ向かって歩き始めなければ、今日から。

 

ヘッドホンから聞こえてきたのは、イーグルスの
どこか悲しげなメロディー
...Last thing I remember, I was Running for the door

I had to find the passage back To the place I was before

‘Relax,’ said the night man, We are programmed to receive.

You can checkout any time you like, but you can never leave…

いつのまにか、ぼくも この迷宮に迷い込んでしまったのかもしれない…

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