大晦日の出来事

昨日の強盗事件をきっかけに、
僕はある出来事を思い出しています。

それは、4年前の大晦日の出来事。
僕はいつもより少し遅く、お昼過ぎにサロンへと向かいました。
31日からは休みにしていて、この日は年末の大掃除を予定していたのです。

サロンの隣は、あの有名パティシエの店。
この日も行列が出来ていて、相変わらずの人気ぶりでした、
この行列を前に、「二階の窓ふきは無理だな、」と思いながら
階段を上がろうとしたとき、ポストの前に何か黒い布のような物が
丸めてあるのを見つけたのです。

”となりに行列している人が荷物を置いているのだろうか?”
あまり気にせずに階段を駆け上がり、サロン内の掃除を始めたのですが、
一時間位経った頃、窓から下を見るとまだ、あの黒い布はそのままになっていました。

不思議に思って、それを確かめるために広げてみると、
それはボロボロにすり切れた黒いパーカーでした。
転んで地面に擦り付けたようにすり切れている、
そして、一緒に黒いニット帽と、傷だらけの携帯電話が丸めてありました。

誰かが酔った勢いで脱ぎ捨てていったのだろうか?
だとしたら素面に戻った時に、自分の携帯電話に電話をかけているかもしれない。
しかし、着信履歴は残されていなかったのです。

誰かが取りにくるかもしれないので、そのまま放置して
さらに2時間が経過、それでも何も変化は無いまま。

なんとなく嫌な予感がしてきた。

もしかしたら、真夜中に喧嘩か窃盗事件がおきて、
被害者の所持品を捨てて行ったのかも?
だとしたら、この携帯電話の持ち主は今、どこに…

もしかしたら、どこか人目につかぬ所で倒れているかもしれない。
僕は、ビルの横の狭い通路を通って、恐る恐る 建物の裏手を見に行ったのです。

そこには、
誰もいませんでした。
でも、何か事件のニオイがして気味が悪いので、交番に届けることにしたのです。
駅前の交番を訪ねると、中から警官が一人出て来て対応してくれたのですが、
この警官、年末年始の時期だけ配属されたらしく、
土地勘が全然ない、おまけに凄い東北訛りで話が伝わりにくい。
それでも状況を説明して、書類を書いて置いて来ました。

帰り際に、その警官に訪ねられました。
「持ち主が出てこなかったら、あなたこれ欲しいですか?」

「結構です、、」
そんな薄気味の悪いもの、いりませんから。

あれから、警察からの連絡は無いけれど、
持ち主は出て来たのだろうか?
年明けの新聞を見ても、それらしき事件は載っていなかったから、
ただの「落とし物」だったのだろうか…
今年もまた忘年会の季節がやってきましたね、
”年忘れ”
この一年の出来事を忘れ去り、新たな年を迎えるためのお祭り騒ぎ。

あの携帯電話の持ち主は、すべてを捨て去りたい何かがあったのだろうか?
そして、その人は今何処に・・・